メディア論 其の五 20171106
課題について
動画の解像度はさほど重要ではない。
それよりも、トリミングやクリッピングなど、マンガや動画の強みを生かした表現ができるかどうかが評価にかかわってくる。しっかりしていて、意味のあるものを作ろう。
次回から製作開始です。
メディア論の歴史の補足
1960年代にマクルーハンはメディア論を確立。この人だけでなく、それ以前の時代にもいろいろな人がかかわってきた。
ベンヤミン
「複製技術時代の芸術作品」という本を残している。写真に関して研究していたが、第二次世界大戦中、ナチスに追い詰められ服毒自殺。
複製の原点は「絵」
一枚の絵を完成させるのには、画家一人を製作期間中拘束するために必要な費用がかかっていた。そのため、肖像画などは高級品で、一部のお金持ちにしか出回らなかった。
このような背景があって、「写真」が生まれた。最初の写真は感光材の性能が悪かったらしく、10分も静止したままでいる必要があった。それにもかかわらず、爆発的に普及し、現在では一瞬でデジタル情報として何千枚も保存できるようになっている。
銀食器
もともと、職人が手作りで作っていた。そのため、高級品。どこかの国には、「誕生日に銀食器を一つずつ集め、結婚するときに嫁入り道具として持たせる」なんて言う風習があるらしい。もちろん、お金持ちだけですが。
現在では、金型技術や、メッキ技術が発達したため、比較的安価で手に入る。ベンヤミンが言った通り、独特の「味」は無くなってしまったが。
産業革命前後での変化
産業革命以前は、なんでも手作りで生産されていた。なので、職人と取引していたのは少数の貴族や王族のみだった。しかし、産業革命以後は大量生産が可能になり、ブルジョワなどに製品が行き渡るようになった。
人々の関係は、職人と貴族の「一対一」の関係から、職人と一般人の「一対多」の関係へ変化した。その後「多対多」の関係が広がっていった。この「多対多」の関係は、ユーザーが発信者となっていることを示している。まさに、今のインターネットだ。
ボードリヤール
シミュラークル
オリジナルを欠いた複製物のことをシミュラークルという。日本語で「模造」という意味。少しわかりにくいが、都市開発で使うPCシミュレーションなどは、実際には存在しないものを、様々なデータをもとに予測・分析を行ってシミュレートしている。後で出てくる二次創作も、部分的にシミュラークルに当たる。
ハイパーリアリティ
リアルよりもリアリティがあるもの。例えば、ディズニーランドやCGシミュレーション、グラフィックが向上した最近のゲームもこれに該当する。
Concept of Image
imageの語源は「何かに似たもの・似せて作られたもの」など。もともと否定的な意味としてとらえられていた。産業革命前後でのimageの認識は
のように変化した。
ボードリヤールも「Imageを通して我々は現実を見るようになった」といっている。
もう一つのメディア論
複製に関しての論点は「オタク文化論」などに継承されたので、現在でもある程度の有効性はある。具体的には「二次創作」という形で論争になっている。
二次創作について
一時作品をさしおき、そのパロディなどを用いてユーザーを活発にしている。作者がOKを出せば可能なのだが、ここ最近はそこら辺の規制はないに等しい。これも一種のシミュラークルと呼べる。
二次創作の是非をめぐる論争は今でも続いている。
マンガ産業において、日本は世界シェア50%。マンガを世界標準にできれば、日本にとっての一大産業に発展を遂げる。それを狙う手段として二次創作は大きな力を発揮する。この時、情報系からはYouTubeのようなプラットフォームを提供するなどのアプローチができる。
しかし、二次創作を推進するプラットフォームを作っても、そこで不法アップロードや盗作されてしまったら元も子もない。実際、個人創作を推進するという名目で立ち上がったサイトが一時作品の不法アップロード場所になってる事例も多々ある(最近になってどんどんサイトが閉鎖されている)。著作権との関係、問題は切っても切れない。
少し前に、「二次創作も部分的にシミュラークル」と書いた。例えば、「公式には出ていないストーリーを創作した」なんてことがこれに当たる。妄想や想像で簡単にシミュラークルを作れてしまうのは二次創作の特徴だろう。
これからのメディア
ここまでは視覚に訴えるメディアだったが、触覚メディアへ移行しつつある。より身近になってきている。また、受け手の立ち位置も単なる受信者からユーザー、そして発信者へ移行している。
付けたし
今回はボードリヤールの主張に基づいて、「複製」の観点で話が進んでいきました。実体がなくても「複製(Image)」が存在する。それはもう実体なのではないかと思ってしまいます。
二次創作品は今も増え続けています。オリジナルがあっての二次創作なんですが、現在は二次創作がメインになっているコンテンツもよく見かけます。それでも問題が少ないのは、一次作品の作者は「書いてもらった」、二次創作の作者は「書かせていただいた」という意識で創作しているからなのかなぁと思いました。
次回からコミックムービー製作なんで、構想練っておきます。