マエカワの備忘録的な何か

思い立ったが吉日

心理情報学 其の五 20171110

基礎数理の続き、やっていきます。

正規分布の性質

 心理テストで得られた結果は、たいてい正規分布に従うことが分かっている。なので、最も基礎的な正規分布からやっていきます。そのほか知りたい方は、「確率論」の講義を見直して。ポアソン分布とか何とか分布とか。
 正規分布の式は

   \displaystyle y=\frac{1}{\sigma \sqrt{2\pi}}\exp{-\frac{\left( x-\mu \right)^2}{2\sigma^2}} \to N(\mu , \sigma ^2)

 ここで、 \muは平均、 \sigma ^2標準偏差を表しています。さらに、この分布を \mu=0 \sigma ^2 =1に(標準化)していきます。そのためには、

   \displaystyle x_i=\frac{x_i-\mu}{\sigma}

と置き換える。こうすることによって、 N(\mu , \sigma ^2) N(0,1)に置き換えることができる。また、

   \displaystyle z=\frac{x-\mu}{\sigma}

と置けば、

   z \tilde{} N(0,1)

と表すことができる。 \tilde{}は左の値が右の分布に従っていることを表している。得られた標準正規分布は、原点から \sigmaまでで68%、 2\sigmaまでで95%、 3\sigmaまでで99.7%占めている。

得点の解釈

 心理テストなどにより得られた得点を粗点と呼ぶ。得点が出た段階では、何もわからない。そこで、標準的な母集団の性質をよく表している規準集団(ノルム集団)のデータ(ノルム)と比べることで、粗点の位置づけや意味を分析できる。
 この規準の取り方は、男女別・地域別・年齢別などさまざまある。その規準の性質をよく表している代表的集団のことを規準集団と呼んでいる。

得点の種類

パーセンタイル順位

 粗点以下の被験者が何%いるのかを取ったもの。順位のこと。

標準得点(z得点)

   \displaystyle z=\frac{x-\mu}{\sigma}

俗称偏差(Z得点)

   \displaystyle \mathrm{Z}=z\times 10+50

正規偏差値(T得点)

   \displaystyle \mathrm{T}=\frac{x-50}{10}

 平均が50、標準偏差が10の正規分布に従う。

偏差IQ(DIQ)

   \displaystyle \mathrm{DIQ}=z\times15+100

 就学時にこの値が70以下だった場合、発達障がいを疑われる。

等価

 等しいことを表す言葉ではなく、「等しくすること」を表している。つまり、異なるテストを比較するときに、それぞれを比較できるようにレベルを等しくすることをいう。
 テストの点数に下駄をはかせるとか、センター試験の得点調整もこれに当たる。線形変換などの方法で実現する。

規準集団規準検査/内容規準準拠検査

規準集団準拠検査

 いわゆる相対評価と呼ばれるもの。学校のテストによる成績はこれに当たる(たまに60点以下は問答無用で不可って先生はいますが)。

内容規準準拠検査

 いわゆる絶対評価と呼ばれるもの。資格試験などはこれに当たる。

例題

1. 200人にテストを受けてもらった。この時、DIQが125以上の人は何人いるか。
  
   \displaystyle \mathrm{DIQ}=z\times 15+100\ge 125
   \displaystyle z\ge \frac{125-100}{15}=1.666

  zの値が求まったので、標準正規分布 \phiの表から値を出す。

   \displaystyle \phi (1.67)=0.4525

 この値以上の人が対象なので、

   0.5-0.4525=0.0475

 これが、全体におけるDIQが125以上の割合になる。したがって、200人の中だと

   200\times 0.0475=8.5

 だということが分かる。

 この例題でもわかるように、DIQであれT得点であれ、なんにしてもz得点に変換してから標準正規分布の表を使うというプロセスに落ち着く。表を参照するのは簡単なので、各得点の導出式、正規分布が表すものをしっかりと理解しておけばこの手の問題は簡単に解くことができる。