マエカワの備忘録的な何か

思い立ったが吉日

ユビキタスネットワーク 其の四 20171030

チャネルについて

 簡単に言えば、テレビのチャンネルのようなもの。これが各帯域に存在する。どのチャネルを使うかはAPが決定する。

2.5Gz帯の場合

 チャネル幅は20MHzで5MHz間隔で配置されている。つまり、4つのチャネルが重複してしまっている。したがって、CSMA/CAを使う必要がある。

5.0GHz帯の場合

 1チャネル20MHz。重複しないように配置されている。

フレームの種類とフォーマット

 ACK,DIFS,SIFSなどの情報をやり取りしなくてはならないため、無線LANのフレームはEthernetに比べて複雑になっている(Ethernetはデータだけ送ればOKだった)。

フレーム制御

 最初の2バイトはフレーム制御といい、このフレームがどのような性質を持っているのかを情報として持っている。フレームのタイプには

  • 管理フレーム
  • 制御フレーム
  • データフレーム

の3種類ある。
 また、フラグには

  • ToDS*1:DSへ送る情報だったら1が立つ
  • FromDS:DSから送られた情報だったら1が立つ
  • Retry:再送したら1が立つ
  • WEP:暗号化したら1が立つ

などの種類がある(ほかにもあるけど、押さえておくのはこれ)。

デュレーションフィールド

 次の2バイトはデュレーションフィールドという。ここには、NAVの時間がマイクロ秒単位で入っている。NAVについては、前回の講義ノートを参照。

アドレスフィールド

 宛先や送信元のMACアドレスが入っている。合計で4つ存在しているが、どれを使うかはフレームタイプによって異なる

シーケンス制御フィールド

 ここにはフレームの制御番号(通し番号、id)が入っている。現在の通信では、データをまとめて送ってブロックACKを返しているため、データの区別が必要になる。そのため、このシーケンスは必須となっている。このシーケンスによる制御をシーケンスControlと呼ぶ。

 ここまでは、無線通信におけるフレームの大まかな構造について。ここからは、フレーム制御で指定される3つのフレームタイプについて書いていきます。データフレーム・制御フレーム・管理フレームの3つです。

データフレーム

 フレーム制御で指定されるタイプの値が'01'。
 ToDSフラグ、FromDSフラグでデータの方向を指定している。ここからはToDSとFromDSのビットを(ToDS , FromDS)と表すものとする。

  1. (0 , 0):アドホック通信。APを介さない。
  2. (0 , 1):APからSTAへの通信
  3. (1 , 0):STAからAPへの通信
  4. (1 , 1):DSが無線LANで構築されている Wireless DS による通信

この組み合わせによって、アドレスフィールドに入るアドレスにも変化が出る。基本的に、Address 1 は宛先、 Address 2 は送信元、 Address 3 は真の宛先または送信元、 Address 4 は真の送信元という分類になっている。ここからはアドレス1からアドレス4までの組み合わせを(Address 1 , Address 2 , Address 3 , Address 4)とする。また、Destination Address 、 Source Address 、 Receiver Address 、 Transmitter Address をそれぞれDA 、 SA 、 RA 、 TA と省略する。

  1. (DA , SA , BSSID , 無し)
  2. (DA , BSSID , SA , 無し)
  3. (BSSID , SA , DA , 無し)
  4. (RA , TA , DA , SA)

…といっても難しいので、ひとつずつ書いていこうと思う。

アドホック通信(上記 1. )

 Address 1 は宛先STAのMACアドレス。 Address 2 は送信元のMACアドレス。 Address 3 はこの通信を経由するAPのMACアドレス

APからSTAへの通信(上記 2. )

 Address 1 は宛先STAのMACアドレス。 Address 2 は通信を経由するAPのMACアドレス。 Address 3 はこの通信の真の送り主であるサーバーのMACアドレス

STAからAPへの通信(上記 3. )

 Address 1 は宛先APのMACアドレス。 Address 2 は送信元であるSTAのMACアドレス。 Address 3 はこの通信の真の送り先であるサーバーのMACアドレス

Wireless DS による通信(上記 4. )

 Address 1 は通信を経由する宛先側APのMACアドレス。 Address 2 は通信を経由する送信元側のAPのMACアドレス。 Address 3 はこの通信の真の送り先であるSTAのMACアドレス。 Address 4 はこの通信の真の送り主であるSTAのMACアドレス

制御フレーム

 データ制御に関する機能を提供している。フレーム制御で指定されるフレームタイプの値が'10'。
 RTSCTS・ACKフレームなどの情報が入っている

管理フレーム

 無線LANに接続するときの手順を実現している。フレーム制御で指定されるフレームタイプの値が'00'。

Beaconフレーム

 これは、STAがAPを認識するための手順。
 APが自分の情報を100msごとに広告している。しかし、STAはチャネルごとにBeaconを検知しなければならず、STAがAPを認識するためには、

  • APがあるチャネルでSTAがBeaconを待つタイミング
  • APがBeaconを送信するタイミング

この二つがぴったり重ならなければならない。
 これではめんどくさいので、STAからAPの情報を要求できるシステムになっている。

  1. STAがProbe Request をブロードキャスト(各チャネルを網羅する)
  2. APがProbe Response に自らのAP情報を載せて送信する

このような手順を踏み、STAはProbe Response フレームを確認してAPを検出することができる。

Authentication

 AP情報を受け取ったSTAは、そのAPが本当にいいものなのかを確認しなければならない。そこで、AuthenticationフレームをSTAとAPで交換して確認を取る。この方法には

  • 全てのアクセスを承認するOpen System
  • WEP暗号カギを用いて確認するShared Key

の2種類ある。

Association

 認証が終了したSTAとAPの間でアソシエーションを作る必要がある。これには、初回アクセスと再アクセスでフレームのやり取りが若干違う。

  • 初回アクセス:Association Request / Response フレーム
  • アクセス:Re-association Request / Response フレーム

このフレームのやり取りによって、APは接続されているSTAのMACアドレスを手に入れることができる。

PLCP

 Ethernetのプリアンブルみたいなもの。ただ、無線LANでは状況によって伝送速度が変わるため、どこかに基準を作らなければならない。
 PLCPは「プリアンブル+無線LANフレームの性質」。これを受信するわけだが、この時の伝送速度は一律1Mbpsになっている。基準を作ることによって、状況に依存することなくPLCPを送ることができる。
 このPLCPが前にくっつくため、無線LAN本来の約7割ほどに伝送速度は落ちてしまう

*1:DSとは Distribution System の略。アクセスポイント同士のネットワークと考えておけばいい。

メディア論 其の五 20171106

課題について

 動画の解像度はさほど重要ではない。
 それよりも、トリミングやクリッピングなど、マンガや動画の強みを生かした表現ができるかどうかが評価にかかわってくる。しっかりしていて、意味のあるものを作ろう。
 次回から製作開始です。

メディア論の歴史の補足

 1960年代にマクルーハンはメディア論を確立。この人だけでなく、それ以前の時代にもいろいろな人がかかわってきた。

ベンヤミン

 「複製技術時代の芸術作品」という本を残している。写真に関して研究していたが、第二次世界大戦中、ナチスに追い詰められ服毒自殺。

複製技術

 オリジナルから複製して大量生産。これによってコストダウンが図られ、ブルジョワにも高級品がでまわるようになった。
 ベンヤミンは写真について言及しているが、この時代、車などの工業製品も「金型」技術で大量に複製されていた。

アウラ(オーラ)

 ベンヤミンは「複製されたものにはアウラがない」と言った。確かに、オリジナルと比べて複製品のオーラはなくなっているだろう。

複製の原点は「絵」

 一枚の絵を完成させるのには、画家一人を製作期間中拘束するために必要な費用がかかっていた。そのため、肖像画などは高級品で、一部のお金持ちにしか出回らなかった。
 このような背景があって、「写真」が生まれた。最初の写真は感光材の性能が悪かったらしく、10分も静止したままでいる必要があった。それにもかかわらず、爆発的に普及し、現在では一瞬でデジタル情報として何千枚も保存できるようになっている。

銀食器

 もともと、職人が手作りで作っていた。そのため、高級品。どこかの国には、「誕生日に銀食器を一つずつ集め、結婚するときに嫁入り道具として持たせる」なんて言う風習があるらしい。もちろん、お金持ちだけですが。
 現在では、金型技術や、メッキ技術が発達したため、比較的安価で手に入る。ベンヤミンが言った通り、独特の「味」は無くなってしまったが。

産業革命前後での変化

 産業革命以前は、なんでも手作りで生産されていた。なので、職人と取引していたのは少数の貴族や王族のみだった。しかし、産業革命以後は大量生産が可能になり、ブルジョワなどに製品が行き渡るようになった。
 人々の関係は、職人と貴族の「一対一」の関係から、職人と一般人の「一対多」の関係へ変化した。その後「多対多」の関係が広がっていった。この「多対多」の関係は、ユーザーが発信者となっていることを示している。まさに、今のインターネットだ。

ボードリヤール

シミュラークル

 オリジナルを欠いた複製物のことをシミュラークルという。日本語で「模造」という意味。少しわかりにくいが、都市開発で使うPCシミュレーションなどは、実際には存在しないものを、様々なデータをもとに予測・分析を行ってシミュレートしている。後で出てくる二次創作も、部分的にシミュラークルに当たる。

ハイパーリアリティ

 リアルよりもリアリティがあるもの。例えば、ディズニーランドやCGシミュレーション、グラフィックが向上した最近のゲームもこれに該当する。

Concept of Image

 imageの語源は「何かに似たもの・似せて作られたもの」など。もともと否定的な意味としてとらえられていた。産業革命前後でのimageの認識は

  • 産業革命以前:現実はあるがimageはない
  • 産業革命以後:現実があろうがなかろうが、imageは存在する

のように変化した。
 ボードリヤールも「Imageを通して我々は現実を見るようになった」といっている。

もう一つのメディア論

 複製に関しての論点は「オタク文化論」などに継承されたので、現在でもある程度の有効性はある。具体的には「二次創作」という形で論争になっている。

二次創作について

 一時作品をさしおき、そのパロディなどを用いてユーザーを活発にしている。作者がOKを出せば可能なのだが、ここ最近はそこら辺の規制はないに等しい。これも一種のシミュラークルと呼べる。
 二次創作の是非をめぐる論争は今でも続いている。
 マンガ産業において、日本は世界シェア50%。マンガを世界標準にできれば、日本にとっての一大産業に発展を遂げる。それを狙う手段として二次創作は大きな力を発揮する。この時、情報系からはYouTubeのようなプラットフォームを提供するなどのアプローチができる。
 しかし、二次創作を推進するプラットフォームを作っても、そこで不法アップロードや盗作されてしまったら元も子もない。実際、個人創作を推進するという名目で立ち上がったサイトが一時作品の不法アップロード場所になってる事例も多々ある(最近になってどんどんサイトが閉鎖されている)。著作権との関係、問題は切っても切れない
 少し前に、「二次創作も部分的にシミュラークル」と書いた。例えば、「公式には出ていないストーリーを創作した」なんてことがこれに当たる。妄想や想像で簡単にシミュラークルを作れてしまうのは二次創作の特徴だろう。

これからのメディア

 ここまでは視覚に訴えるメディアだったが、触覚メディアへ移行しつつある。より身近になってきている。また、受け手の立ち位置も単なる受信者からユーザー、そして発信者へ移行している。

付けたし

 今回はボードリヤールの主張に基づいて、「複製」の観点で話が進んでいきました。実体がなくても「複製(Image)」が存在する。それはもう実体なのではないかと思ってしまいます。
 二次創作品は今も増え続けています。オリジナルがあっての二次創作なんですが、現在は二次創作がメインになっているコンテンツもよく見かけます。それでも問題が少ないのは、一次作品の作者は「書いてもらった」、二次創作の作者は「書かせていただいた」という意識で創作しているからなのかなぁと思いました。
 次回からコミックムービー製作なんで、構想練っておきます。