Visa Worldwide New Form Factor Workshop に行ってきた。
はじめに
こんにちは。マエカワです。
今回は、2018/2/27から2018/3/3の5日間にわたって開催された、「Visa Worldwide New Form Factor Workshop」に行ってきたよ、というお話を書いていきます。武蔵野美術大学・東京工業大学・電気通信大学という3大学間で学生を募って行ったワークショップで、自分でも貴重な経験ができたと感じているのでぜひ共有したい。いつものような講義ノートではないので、ぜひ軽い気持ちで見ていってください。目次は以下の通り。ほとんどマエカワの日記みたいなものなので、結局よかったの?どうなの?って人は、最後の方からお読みください。
それでは、よろしくお願いします。
ことの発端
それは、2018/2/8。自分がとっていた「イノベイティブ総合コミュニケーションデザイン2( iCC-D2 )*1」という講義の最終プレゼンの日のことです。
担当の先生から、一枚のチラシを渡され一言。
「こんなのあるんだけど、行ってみるかい?」
チラシには大きく「コンセプトデザイニング」の文字。なんだか、毎年夏にムサビと東工大が連携して行っているらしい。しかも今回はスポンサーがついて、なんか豪華になっているらしい。というふわふわした説明を聞かされました。
もともと、ムサビと電通大は提携校なのだそうです。電通大名物「輪郭の断片*2」も、もともと連携講義の中で生まれたものだとか。そのつながりで、今回自分に声がかかったということです。
ほかの大学の人たちと交流することなんて滅多にないので今回応募。自分を合わせて電通大からは2人。直前になっての飛び入り参加ということで、お世話になることになりました。
1日目
ムサビへ初登校ですね。「鷹の台」から歩くこと20分くらい。
ということで、武蔵野美術大学に来た。4枚目、奥に見えるのはアートギャラリー。 pic.twitter.com/PvJwj4yvjn
— マエカワ (@MaekunMaesan) 2018年2月27日
ムサビのキャンパスに到着です。とにかく、環境がいいなというのが第一印象。ムサビの学生さんは自虐気味に「遠いんだよね…」とか言っていましたが*3、高校生のときに使った緑道の雰囲気が感じられてとても懐かしい気持ちになってしまった。
今回は、7号館というところで作業をしていくことに。参加者は30人くらいですかね。衝撃的だったのは、ムサビの学科名。「視デ*4」「デ情*5」「基礎デ*6」「油*7」などなど、最初聞いた時はここで何が繰り広げられているんだと思ったものです。
最初は軽めのオリエンテーション。Visaさん、ソニー銀行さんから今回のテーマについて説明されました。そのあと、今回お世話になる講師陣からの講義・アイスブレーク。美大の先生、むっさおしゃれだなぁと講義を聞きながら思っていました。この講義、一般大学からきている自分にはとても新鮮だったので、簡単にまとめていこうと思います(ここだけ講義ノートっぽくなりますが、ご容赦くだされ)。
同じ空間でも、違う空間
最近こんな表現を使いすぎている気がする。同じでも違う。とても大切なことです。
アートとデザインの違い
アートは問題提起。だからこそマイナスイメージを持つものでも成り立つ。対してデザインは問題解決。普通はポジティブなものが出てくる。
自分の国の言葉で話すべからず
理工系にかかわらず、どの分野の人間も自分の国の言葉で話がち。それでは、相手に伝わらないことが多い。海外の人と話す時、お互い気を付け合って、丁寧に自分のことを伝えている。これを異文化どうしだけでなく、異分野どうしの交流でもしろよというお話。
3日目
中間プレゼンの日です。前日の大雨でぐちゃぐちゃになった道で滑りながら、ムサビへ。
ムサビの中で一番大きな教室でプレゼンすることになりました。大きなスクリーンに、各社の方。同時通訳の方もいらっしゃっていて、かなり緊張したりしていた。
プレゼン開始。他の班のプレゼンを聞いてみると、使用想定を話し合いで詰めていっているところとか、実際に運用するものから考えていっているところなど様々。グループによってこんなに特色が出るんだなと正直驚いていました。自分たちのグループとの違いを見つけたり、出てきた質問を聞いて自分たちにフィードバックしたり、ここだけでもかなり参考になることがありましたね。
中間プレゼン後には「デザイン思考」について、「環世界」の話を交えながらレクチャーを受けました。見る視点によってものの見方は全く異なる。アートは理解できないのではなく、理解できる目線に自分がいないということ。ただそれだけ。相手が見ている世界をいかにまざまざと見るか。ここにヒントがあるかもよ、とのことでした。あと、イノベーションとは、賛否を分けるものだということも。もっとザラザラしていいんです。
中間プレゼンの後は、作業に戻ります。方向性はいいのか、見えていないことはないのか。もう一度、自分たちの作ろうとしているものを再確認。この振り返りの時間はとても有意義なものに。「他を知ることは自分を知ること」とはよく言ったものですな。全くその通り。
結局、この日は差し入れのカップ麺をズルズルと食べながら、21時過ぎくらいまで作業をしてました。
ちなみに、マエカワの春休みはこの日からスタート*8していました。春休み開始から密な経験ができて、とてもうれしかったです。
4日目
作業は最終日。このワークショップでムサビに来るのも最終日。10時に集合して、最終的なプロダクトの構想を詰めていきます。
お昼ご飯にムサビ構内にあるパン屋さん「エミュウ」で、塩バターパン、明太チーズパン、グラタンパンを買ってみました。芝生でご飯を食べるという、なんとも乙なこともやったりして。ムサビ生はよく外で製作しているそうです。やっぱり開放感があったほうがインスピレーションが湧くんでしょうか。
ご飯の後は、アイデア出しが煮詰まってきたので世界堂*9に行き、素材を買って、製作して。実際に手を動かした方が見えてくるものもあるもんです。最終プレゼンの資料も作らなきゃならんので、てんてこまい。時間はあっという間に過ぎ去り、気づいたときにはコアタイムは終わっていました。
帰りの電車で編集作業をしたり。帰ってから編集作業をしたり。プロダクトを作ってくれたメンバーには心から感謝をしたい。ありがとう。
5日目
準備やなんやで、あんまり寝られず最終日。最終日は、六本木のデザインラウンジの一室を丸々使ってのプレゼンテーションです。
自分のグループは一番はじめの発表だったのでかなり慌ただしく準備や会計をしてました。
プレゼンの内容とかは、知財を握られているのでここには載せられませんが、どのグループも楽しそうに発表していたのが印象的。寸劇をしたり、実演したり、体験してもらったり。
途中、インタビューを受けたりなど慣れないこともこなしました。無いボキャブラリーを総動員してコメントしたら…
「20秒でまとめてください(笑)」
え…。無理。
こういうことを経験すると、テレビに出ている人たちって大変なんだなぁと実感できますね。文字通り、秒刻みの調整が必要だから。羽生結弦ってすごいなと思う。
それと、インタビューしてくれた方に逆インタビューみたいなことをしたので、それについて書いていきましょう。
Q. このワークショップ、注目されてるんですか?
過去に2回ほど同じワークショップは行われているけど、今回はじめてカメラが入ったそうです。わりと注目されているようでした。撮った映像はどこのメディアで使われるのか。全く知らされていないので、ドキドキですね。
Q. 大人が聞いててどんなもんなんですか?
会社に入ると、ターゲットが明確に決まっている。つまり、落とし所が決まっている。そういう意味で、大人ってのは視野が狭いらしいです。中間プレゼンのときも、前のめりになって聞いてくださっていたということです。
と、こんな感じのことを聞いてきました。休憩時間にインタビューを受けたのでこんなもんしか話せなかったですが、普段は話すことができない仕事の人と話すことができたのは良かったです。
最後に
今回のワークショップ、とても楽しかったです。結果はどうあれ、これに尽きる。結果発表の後に謎の円陣を組んだり、写真を撮りまくったり。さすがは5日間のほとんどを一緒に過ごしただけはある。
参加する前は、「美大生がアイデアを出して理工系がまとめてプロダクトにする」という制作プロセスを想像していたんですが、ふたを開けてみるととてもそんな状態じゃなかったですね。双方譲れない美学的なものがあったりするので、混線しているグループがほとんどだったように思えます。英語チームはもっと混線していたんじゃないかな。何はともあれ、大勢の学生が一堂に会して決済方法について真剣に考える場なんて今までなかったわけで。Visaさんは「しめしめ」と思っているに違いないでしょう。あとで聞きましたが、Visaの偉い方にも好評だったらしいです。
初日のレクチャーで出てきた「美大では、世に言う大学のことをまとめて一般大学と呼んでいる」というフレーズ。最初は笑っていましたが、あながち間違いではないなぁと最終日に思っていました。これまでの人生の中で、美大の人とは関わったことがなかった。美大生と言えば「美的センスを持つ選ばれた人」みたいに思っていた節があります。正直に言うと、自分の中の世界に美大生は存在してなかったんですよね。そして、これは多くの一般大学の学生が持っている価値観だと思う。理系か文系か、この二択しかない。今回のワークショップで美大生についてもいろいろ知ることができて、閉じた世界がちょっとだけ広がった気がします。プログラム関係のアルバイトをしている人に「バイトしない?」と誘われて驚いたり*10、「電通大生って電通に就職するの?」と聞かれて返答に困ったり、酒に異様に強かったり*11。
それと、ムサビの長澤学長が言っていた言葉も印象的でしたね。
「美大生は日ごろからアウトプットをしている」
「プロダクトを作るために、自分のことを後回しにしている」
「プレゼンがうまいとか見やすいとか、そういう言葉でまとめないでください」
と。衝撃的*12。
こんな感じでワークショップに参加してきたわけですが、突っ込みどころがある発表のほうが良かったのかなと感じています。完成形に近ければ近いほど、突っ込みどころは無くなって、そこからの広がりが望めないなと。よく、「今ヒットしているサービスは発表当初クレイジーなものだった」と言われる。twitterもmacもLINEも。今回の活動を通して、自分は出てきたアイデアを完成形に落とすことに特化しているのかもしれないなと感じました。いいことなのかもしれないけど、イノベーションを起こすには必要ないスキルなのかもな。ザラザラしないし。
これから先、ないものを作らなければならない機会が必ずやってくる。来るその時に必要な考え方を学べた、非常に有意義なワークショップでしたとさ。
今回お世話になった手羽さんが書かれている記事がありますので、より詳しく知りたい方はそちらまで。
partner-web.jp
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この場を借りて、このワークショップに参加するきっかけになった電通大と武蔵野美術大学の「つながり」と、手羽さんをはじめとする、このワークショップを運営していただいたすべての方、参加していた学生の皆様へお礼を申し上げます。
花見にいこうということがありましたら、ぜひ誘っていただきたい。
読んでいただいた方に感謝を。
理系っぽくないと評されたマエカワ。
*1:旧エンジニアリングデザイン。この講義は、電気通信大学の3年時に開講されるPBL型の講義です。前期はアイデアソン形式、後期はハッカソン形式という感じです。「ハッカソン…なんか技術ないといけないんでしょ…」と考えている学部2年生の方は、物は試しという感じで「単位も出る」この講義を取ってみてはどうでしょうか。
*2:気になる方は、twitterで「輪郭の断片」と検索してください。電通大生の「今」を知ることができます。
*3:遠いのは間違いないんですが…。
*4:視覚伝達デザイン
*5:デザイン情報
*6:基礎デザイン
*7:油絵
*8:レポートの締め切り日が2/28だったのです。ぎりぎりまで推敲してた関係でこんなことになりました。電通大は休業期間に入るのが他大学よりワンテンポ遅いことを自虐ネタにしています。
*9:ムサビには、行内に世界堂があるんですよね。びしっと並んでいる顔料だったり、アクリルガッシュだったり。とてもテンションが上がっていました。
*10:院に進んだら考えてみようと思っています。
*11:今回参加した人たちがってだけかもしれませんが、尋常じゃないなと思った。
*12:これが衝撃的でないと思えるようになりたいですね。
ソフトウェア工学 其の八 20171214
構造化分析(続き)
前回出てきた図は「業務をモデリング」していることをもう一回書いておく。このように、モデリングを図にして表したものをDFD(Data Flow Diagram)と呼ぶ。構造化分析以外のことをするにしても、このDFDをキチっと理解していないとダメらしい。何かを理解するときに、この図を頭の中にイメージできるといいエンジニアになるとも。ちゃんと理解しよう。
DFDはフローチャートと似ているが、異なるものだということを頭に置いておかなければならない。フローチャートは「プロセスの実行順番・制御」について記述したもの。DFDは「データの流れ」を記述したもの。*1
DFDの書き方
具体的なDFDの書き方を以下に書いていく。
レベル0DFDを書く
そのシステムがどのようなものなのかだけを書いておく(どんな入力を受けて何をするのか)。なので、プロセスの数は1個。仕様書の文脈だけを図にしているとも表現できるので、レベル0DFDのことをcontext diagramと呼んだりもする。
DFDを再帰的に詳述する(水平・垂直分割する)
分割していくたびにDFDのレベルが上がっていく。
分割する際の注意点は、ちょっとだけ分割するということ。分割していくほど、各プロセスの仕様書を書くことができる。この仕様書のことをPSPECと呼ぶ。PSPECを構文解析、詳細分割していくことで、下位のPSPECが手に入る。この処理を繰り返し繰り返し、分割不可能なところ(具体的なアルゴリズムが想像できる)まで行っていく。このことを段階的詳細化と呼ぶ。
一般的にはレベル7DFDまで書くのだが、1回で5個に分割できるとすると、レベル7DFDは7万8千くらいのプロセス。とんでもない量になる。仕様書が膨大になるわけだ。
データディクショナリー
設計段階で出てくる用語をまとめたもの。誰でも理解できるように書く必要がある。
上に示したDFDという考え方など、ソフトウェア工学に出てくる概念はとても簡単なものが多い。その理由は、大規模で複雑なシステムを良く作るための学問だから。現実社会でも、問題にぶち当たったとき、どのように簡単にシンプルに問題を変換して解決するのかが重要になってくる。そういうところにも使える基礎的な知識だ。
さて、ここまでやってきたのが構造化分析。DFDでシステムの業務をモデリングすることはできたが、ここからどのようにプログラムに落とし込むのか。これが残りの内容で、構造化設計という。
構造化設計
STS分割
全てのDFDに共通する特徴は、
- 前半でデータの整理
- 真ん中ででデータの処理
- 後半でデータの整理
ということ。つまり、DFDは上の特徴に従って3つに分割して考えることができるということだ。この分割方法をSTS分割と呼ぶ。
モジュール構造図
STS分割されたDFDはいったい何を表しているのだろうか。それは、関数の呼び出し関係だ。例として、プロセスがSTS分割によって、という部分(モジュール)に分割されたとする。これは、という関数を順番に呼び出しなさいという表現に読み替えられる。さらに、各関数の中身(モジュール)はDFDに具体的にきっちり書かれている(そうなるようにDFDは記述されているはずだ)。これを図にしたものをモジュール構造図と呼ぶ。
気が付いたら、コーディングすべきことが分かっている。DFDをモジュール構造図に落とし込むことこそが、構造化設計。
モジュール構造図の形について
構造化設計では、分割するほど末広がりな形になるのだろうか。
答えはNoだ。下の方ので共通するモジュール(例えば、画面に文字列を表示するとか)が出てくるので、そんなに広がらない。一番理想的な形は、ひし形。モジュールを増やすので途中までは広がるが、ある時点で共通モジュールの関係でしぼんでいく。
良い設計とは
良い設計の特徴をいかに箇条書きにする。
- 縦に分割→各サブツリーの機能が分かる
- 横に分割→上の方はドメイン(機能・分野)の言葉、下の方は実行環境の言葉で書かれている
- ファンアウト・ファンイン・幅・深さのバランスがいい
こんな感じ。
小々節「モジュール構造図の形について」で、出てきた「ある時点」とは、ドメインの言葉と実行環境の言葉が入れ替わるあたり。
ファンアウト・ファンイン
新しい言葉が出てきたのでここで補足。
ファンアウトとは、一つのモジュールから伸びている線の数。ファンインとは、一つのモジュールへ伸びている線の数。この二つの値が近い方が、モジュール構造図の理想形に近い構造になっている。
*1:http://www.dab.hi-ho.ne.jp/sasa/hyoryuki/dfd/に、フローチャートとDFDの違いについて書いてあるので参考に。